第15回日中韓ランドスケープ専門会議に参加しました
2016.11.01
2016年10月28〜30日の3日間に渡り第15回日中韓ランドスケープ専門会議・国際シンポジウムが東京大学農学部弥生講堂を会場に開催されました。弊社もポスターを出展し、29日の国際シンポジウムと夜の交流会にも参加しましたのでその様子を報告致します。
今回の会議の主題は「都市インフラとしてのランドスケープ」でした。2020年に東京で開催されるオリンピックを踏まえ、既存のインフラに如何にして緑地や河川、歩行者空間を巧みに折り込み繋げ居心地良い都市空間をつくるか、植物を使った雨水処理帯など環境に配慮したグリーンインフラの導入などが議論の焦点になっていました。
弊社が出展したポスターでは、中国の3つのプロジェクト:1.都市に住む人々に身近な自然と触れる機会を提供するUrban Forest(珠海市), 2.都心部の分断された歩行者の動線を繋ぎ緑陰を与えるEnvironment and Human Activity(重慶市),3.長江の水辺の環境をテーマにしたWater Environment(海門市)を紹介しました。弊社以外にも国内の設計事務所10数社に各大学の研究室が参加していました。しかし英訳されていないポスターも見受けられ、展示ホールには人の出入りも少なく、3カ国の情報共有の場として活用しきれていないと残念に思いました。
シンポジウムでは日本、中国、韓国の研究者や専門家より事例報告が行われました。都市に適応した新しい生態系の出現や、韓国ソウルの細にわたった緑化アクションプランなど多岐に渡る内容でした。都市開発の円熟期に入った3カ国の中でも、とりわけ日本の東京と韓国のソウルでは分断された緑地や空間を繋ぎスムーズな流れをつくることが重要視されていると感じました。対して、広大な中国においては各都市の急速な開発に伴う環境問題が深刻であり、水質汚染など規模の大きな問題を地域毎に解決することが目下の課題の様でした。
パネルディスカッションでは公共事業における政府機関や地域コミュニティとの関係性について意見交換があり、国ないしは自治体毎の政策の重要性を再認識しました。
シンポジウムの締めくくりの交流会で中国の設計者の方とお話した際、開発が進んで規制の多い主要都市よりも地方都市のプロジェクトの方が出来る事の幅が広くて面白かった、と耳打ちされたことが印象的でした。地方毎に全く異なる文化や自然を持ちかつ急速に近代化を進める中国のプロジェクトに参画出来ることは光栄なことであり、その地域の文化的、自然的価値を損なわない質の良い都市空間の創出に努めなければならないと感じました。
小野 香織