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羽田空港新国際線ターミナルに行ってきました

2010.09.15

10月21日にオープンする羽田空港新国際線旅客ターミナルを見学してきました。

羽田空港の再拡張事業がいよいよこの秋に完成します。
発着能力をアップさせる4本目の滑走路と、新たに国際線地区を設け旅客及び貨物ターミナルを建設し、国際線定期便の受け入れを可能にします。
当社は平成17年に行われた国際線旅客ターミナルのPFI事業コンペにHKTグループのランドスケープ担当として参加し、HKTグループが最終事業者に選定され、当社でランドスケープ実施設計を行いました。

PFI事業コンペに参加したコンソシアム(運営・航空・設計などの連合体)は、世界有数の空港及びエアラインで構成され、二次審査では3グループに絞られました。
私たちのHKTグループは羽田・成田空港、JAL・ANAを軸にしたオールジャパンチームで、絶対に負けるわけにはいきませんでした。

そこで私たちが考えたことは…
ここにしかないもの、ここでしかできない思い切ったデザインです。
空港でしか出来ないデザイン、羽田にしかない風景という場所性を顕在化した風景を創出させることでした。しかし課題がありました。

1:国際線ターミナル前面は異なる3つの事業主体の敷地で構成され、一体的な景観形成が困難。
2:羽田からは富士山が望めるが、ターミナルからは目の前の駐車場棟が邪魔をして富士山が見えない。

そこで我々の出した提案は……

1:滑走路に平行な「空の森」を形成し、空から見えるダイナミックな樹木の列植で3つの敷地を越えて道路やモノレール軌道で分断された敷地をつなぐ。
2:富士山への眺望を確保するため駐車場棟を楕円形にして南にずらし、空の森を富士見軸で切り取り、連絡通路を富士見ギャラリーにする。

課題を解消させる、我々の思い切った提案は採点上の減点も考えられたため、コンソシアム内で慎重な議論がされましたが、この案にかけようと最終的に責任者のGOが出たときは身が引き締まりました。

「空の森」の樹林帯は4種類6列の樹木で構成されています。
ターミナル側はオオシマザクラ、その後ろにエノキ、タブノキ、クロマツで構成されサクラを風から守ります。
また、サクラを引き立たせる里山の階層景観をメタファーにしています。
楕円の駐車場はターミナルの建物と対峙せず、軸をずらし多摩川に沿うランドスケープ施設として一歩引いてターミナルを引き立たせる役割ですが、逆に緑の中で結構目立っています(笑)。

空港ターミナルは複雑な建物でサインシステムに依存する部分が多い中、新国際線ターミナルはモノレールのプラットホームに出国審査場がついたくらい(ホント)の衝撃的なシンプルさで出国できます。
ランドスケープも同様に、「空の森」が形成する階層性、富士見軸、松にサクラというシンプルな構成でこの国の自然観を相互関連させて日本の玄関性をプレゼンテーションしています。
実際に、これほど明快に「場」を読んで「間」(関係性)をつくることが出来るプロジェクトはおそらくないだろうと思います。
時代に消費される表層のデザインが氾濫する中、長く愛される空間なるためにも、まだ小さな空の森の樹木の成長を見守っていきたいと思います。

清水達也

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