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日本造園アカデミー会議に参加して−2

2010.09.03

2日目の講義は「宿根草のエコロジカルプランティング −生態系が生まれる持続可能な庭造り−」と題して、富山職藝学院渡邉美保子教授のレクチャーを受けました。
渡邉教授はイギリスでガーデニングを勉強した後、東京農業大学農学科に進み、園芸の基礎を学び、現在の職に就かれています。
テレビ、雑誌で取り上げられる女流ガーデナーの中には植物の基礎や実務とは離れ、プロデューサー的な立場の人もいますが、彼女は一貫した現場主義、実践派と見ました。
恵まれた学校のフィールドを舞台に、学生達と長い時間を掛けた実習の結果による解説なのでブレがありません。私はエコロジカルプランティングの入口を体験することが出来ました。


内容を簡単に述べます。

・英国における宿根草ボーダー花壇の嚆矢は女流園芸家ガートルード・ジーキル(1843〜1932)で英国の自生植物を大切にし、色彩理論を応用した新鮮で独創性溢れる手法を確立、現在に至っております。

・公共緑化におけるエコロジカルプランティングは1983年頃からドイツで始まり、中でもピーター・オドルフは本場イギリスのウィズリーガーデンを手掛け、宿根草のボーダー花壇に於いて、枯れた枝を晩冬に一斉に刈り込むだけの管理手法生み出し注目されました。
日本における宿根草のエコロジカルプランティングは、自然界の植物の多様性をお手本にして、様々な植物が共存する空間を生態学的、あるいは植物社会学的な手法により植栽する方法です。
事例として、日本の草地の生態(ワラビ、ススキ)、匍匐根茎による繁殖様式(ノコンギク)、落葉樹の林床の生態(オウレン、チゴユリ)の紹介がありました。

・生態的な特性に基づく植栽デザインは多種多様な植物が互いに共生している自生地の植生等をお手本にするのがスタートです。
地上部の成育型や地下の根茎の繁殖様式、自生種の生活型などを参考にして、宿根草を組み合わせることにより、侵入雑草を抑制し、植物の生きる力を引き出すデザイン手法です。
ルートシステムによる組合せ(コレオプシスとカクトラノオ、シュウメイギクとキョウガノコ)、実生で繁殖する宿根草の利用(宿根フロックス)、少量多品種の組合せ、短命な宿根草と長命な宿根草の組合せ(フランネルソウ)

・エコロジカルプランティングの手法を庭園や公共緑化に取り入れることにより、庭園に安定した生態系が生まれ、人間と植物の心地よい関係が持続可能になる。


本人が計画した事例を紹介して終了しましたが、まだまだランドスケープデザインには可能性があることが実感されたお話しでした。



次回に続く

戸田芳樹

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