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日本造園アカデミー会議に参加して−1

2010.08.25

日本造園アカデミー会議の造園シンポジウムに参加しました。
主催は日本造園組合連合、通称「造園連」です。造園業を営む方々の組合ですが、年に1回「産・官・学」のメンバーが集い、勉強会を設ける主旨で、今回が第33回の開催ということでした。

富山で8月19日(木)〜20日(金)開催、3人の講演者のひとりとして「造園の世界を明るく元気にしたい」と話をして来ました。
全体テーマが「造園の魅力を伝える〜新たな可能性、−生きものの力と造園を考える−」でしたので、造園の世界を元気にするためには、5つの多様性がキーワードとして重要であると、話をしました。



1.国家戦略としての生物多様性
今年名古屋で10月から開かれるCOP10についての大まかな流れを話し、「生態系サービス」「3R」等の新語は、古くから日本人の生活に定着していた「自然の恵み」「もったいない」等、日常的に使い、実践していたことを確認しました。
また、造園業の人たちは地に足がついて活動しているのだから、「グローバルシンキング、アクトローカル」で自信を持って実践すべきと、エールを送りました。


2.造園教育の多様性
東京農業大学造園科学科の演習を紹介しました。
「社会において自ら課題を発見し、造園の力でそれを解決する」いわゆるソリューションビジネスとしてデザインワークを進めた内容を示しました。
参加された金岡省吾富山大学教授は、地方で地域経済・文化に貢献しない大学は不要であると延べ、造園に於いてソリューションを対象としたデザイン演習をしている内容に、驚きの表情でした。
また、学生間の交流と中国の各大学におけるランドスケープデザインの先進性、学生達の向上心についても紹介しました。


3.日本文化の多様性
ヨーロッパのランドスケープデザインの中で、日本庭園の影響を受けていると思われる作品の紹介をしました。
十数年前であれば、石造品や橋など、直接的に引用されたデザインの事例が多く見られましたが、最近では日本の伝統的デザインの基本となる考え方、例えば「のぞき」「ゆらぎ」「あ・うん」「ア・シンメトリー」を発想の原点に置いた優れたものが多く見られ、それらを、事例を通して説明しました。
河原元東京農業大学教授、尼崎京都造形芸術大学教授は大変興味を持たれ、幾つもの質問をされました。


4.造園デザイン活動の多様性
ランドスケープデザイン界は、現在、周辺領域との境界が曖昧になって来ており、建築家、インテリアデザイナーがランドスケープ空間に進出し、その逆の例もジャンルを超えて発生し、新しいデザインの芽生えが見えて来ております。
また、グラフィックデザイナー、アーティスト、音楽家等とのコラボレーションによる、新鮮な体験や作品の成果、今まで関係性の少なかったジャンルにおけるディレクターの要請等、新しい動きを感じている事を話しました。


5.ビジネスモデルの多様性
知人の園芸家、徳原真人氏の活動について述べました。
マンションの造園管理において、材料の見積等で経費を算出するのではなく、性能契約をして、責任を持って美しい空間を維持する方法により信頼を得て、成果を高めた例を紹介しました。
一元的に責任を持ち、包括的にサービスする事業を私たちも手の内にしなければならない時代が来たようです。
また、近代資本主義の行き詰まりの中で、原丈人さんが提唱する「公益資本主義」儲けた金で社会にどう貢献するか、についても紹介し、今世界が大きく変化しているのであるから、主体性を持ち、造園の力を信じて事業を進めようと提唱いたしました。



次回に続く

戸田芳樹

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